調理器具もまともに持っていなかった大学生の一人暮らし時代。自ずと外食やらコンビニやらと、インスタントな生活になってしまうわけですが、そのころ私が作っていた料理とも呼べない料理があります。その名も「望郷シーナスパゲティ」なるものです。

 

そもそも椎名誠という人は国内外、そして辺境を歩きつくし、世界の食を食べつくしたような人なのですが、その経験もあってか、一般的な食通とはまた違った食の見方をします。

 

ラーメン好きというのは、だしがなんであれ、具がどれほどであれとにかくラーメンだったらいいや、という人がけっこう多いのだ。ぼくも本当はそうなのである。

出典:椎名 誠. ひるめしのもんだい 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ

 

むしろラーメン好きなら、まじかよと言いたいとこでしょう。その一方でなんとなく分かるという方も多いのではないでしょうか。私も覚えがあります。昔通っていた大学の学食のタンメンは本当に美味しくなかったけど、なぜかいつも注文してしまうのです。皆が食べてるカレーは美味しいんですが、そのまずいタンメンばかり食べてました。

話は逸れましたが、そんな椎名誠が紹介するレシピですから、やっぱり豪快なものであって、また引用すると次のような料理なのです。

 

ひところキャンプ料理で、スパゲティ料理にいたく凝り、いく日かの不屈 の闘魂によってついに「望郷シーナスパゲティ」というものを完成させた。つくり方は簡単で、よく茹でたスパゲティを皿に盛りいきなり大量のカツオブシをコレでもかコレでもかと叫びつつばさばさふりかける。あついスパゲティにふりかけられたカツオブシはおかしなことにそこで わらわらと身 をよじって踊るのだ。数秒それを眺めたのち続いてすぐにマヨネーズのチューブをサカサにし「コノヤロコノヤロ」と叫びつつ、ぐにょぐにょとまんべんなくひねり落下させる。次に「ドーダドーダ」と叫びつつショー 油を注ぎ、間髪を入れず全体をごちゃごちゃにかきまぜて食ってしまうのだ。

出典:椎名 誠. ひるめしのもんだい 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ

 

まぁつまり、茹でたパスタに鰹節とマヨネーズ、それから醤油を和えるというまさにそれだけの料理なんですが、学生だった私はこれなら自分でも作れる!と思い、スーパーかコンビニだかは思い出せませんが、醤油だけはあったので、残りの三つを買いに出かけたというわけです。

そして作ってみると本当に簡単で、必要な料理道具は鍋だけといった感じで、当時の私は椎名誠のパスタを作っては、四つの食材と鍋さえあれば生きていけると固く信じたものです。

 

久々に作ってみる。

学生の頃と同じように冷蔵庫に麦茶くらいしか入っていなかったので、久々に作ってみようと思います。

麺を茹で、

茹で上がったパスタをボールに移し、

順序は逆ですがマヨネーズをふりかけ、

鰹節、やや少ないけど、それをまぶし、

醤油をかけ、混ぜ合わせたら出来上がり。見栄えはとても悪いですね。

最近は糖質はやたらめったらと敵視されていて、私も大いに敵視してるわけですが、その観点から言ってこのパスタは栄養的にいただけません。何しろほぼ糖質だけですからね。こんなもんをあてにして生きてたのかと思うと、いかに何も考えずに生きていたのかが分かります。

でも味はまぁうまいです。手間数だったり材料費のことを考えると、費用対効果は半端なく高いと言っていいでしょう。効果が何を指すかはわかりませんが。

椎名誠曰く、熱いうちに食べればめちゃくちゃうまいが、冷めるとめちゃくちゃまずいそう。熱いうちにパパッと作って、一気に食べるのが良さそうです。

とまぁ、実に料理とも言えないものなのですが、家にパスタとマヨネーズと醤油、それから鰹節しかないなんて時はぜひおすすめします。

 

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